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【23.12.18】世界の光 核禁条約/第2回締約国会議 笠井議員に聞く〔上〕

11月27日から12月1日までニューヨークの国連本部で開かれた核兵器禁止条約第2回締約国会議。昨年のウィーンでの第1回締約国会議につづき、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)や日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表とともに、日本共産党を代表して参加した笠井亮衆院議員に、会議で示された希望と確信、今後の課題、日本のとるべき態度について聞きました。(若林明)


ニューヨークの国連本部で採択された核兵器禁止条約が発効、第1回締約国会議を経て、再びニューヨークに戻ってきた会議でした。

この間、ロシアやイスラエルによる核使用の脅迫があり、他の核保有国も核戦力の維持・強化を図る重大な逆流が起こっています。核戦争の危険という世界の現実の中で、条約が生きて大きな力を発揮し、実効性・規範力を高めています。

6年で深化

フアン・デラフエンテ議長(メキシコ)は「いま私たちは受け身で沈黙しているわけにはいかない。核兵器による脅威は現実であり、だからこそ強いメッセージを伝える必要がある。いまこそ、この世界に核兵器はいらないというべきときだ」と力説していました。

中満泉(なかみつ・いずみ)国連軍縮担当上級代表との懇談では、2017年の採択の喜びを確認しあい、私が「この条約は6年間で深化しましたね」と言うと中満氏は「その通りです」と応じました。

会議では、この間の進展を「希望の光」と喜び、同条約の具体化と普遍化を真剣に討論しました。注目したのは、同条約に対する「改正意見」はまったくなかったことです。

94カ国が出席した会議は、最終日の12月1日、「核兵器の禁止を堅持し、その破滅的な結果を回避するための私たちの誓約」という政治宣言を採択。「条約は現在、93の署名国と69の締約国によって強固なものとなっている」とし、この道で力合わせ「核兵器のない世界」に進めるという自信あふれる会議として大きく成功しました。会場では全ての国が主役で、被爆者・核被害者、市民社会、国会議員、若い世代、女性が輝いていました。

宣言に結実

日本原水協や日本被団協の代表とともに私自身、被爆2世の党国会議員として議長や各国政府に要請文を提出して働きかけました。

その内容は、会議開催を歓迎し、第1回締約国会議のウィーン宣言と行動計画の具体化への期待を表明、(1)非人道的な結末を警告し、核兵器使用を許さない強いメッセージを伝える(2)核兵器の被害者支援と国際協力の実践(3)核抑止論からの脱却をよびかけるなどです。

締約国会議のサイドイベントとしてオーストリア政府とICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が主催した国会議員会議で発言し、私の修正案も盛り込んだ声明が締約国会議で読み上げられ、政治宣言に反映されました。

「核抑止」に痛烈な批判

今日の情勢下での核被害者の訴えに耳傾け、具体化を進めた核使用の現実的危険のもと、核兵器の非人道性を改めて告発し、「核使用を絶対に許してはならない」の決意を共有しました。政治宣言は、「核兵器のいかなる使用も、また使用の威嚇も国連憲章違反」であり、「核兵器によるあらゆる威嚇を明確に非難」しています。

参加者の胸を打ったのが被爆者の発言です。

日本被団協の木戸季市(すえいち)事務局長は「ウクライナとガザから伝えられる光景は被爆者にとってあの日の再来」「原爆が人間を滅ぼすか、原爆をなくし人間が生き残るかの世界です」「希望をもたらす会議になることを心より祈念する」と訴えました。

デラフエンテ議長は「木戸さんのような経験をした人の証言に代わるものはない。条約未参加国やオブザーバー参加国に条約参加を促すもので、正しい方向への一歩となる力強い証言」と応じました。

50億人餓死

「核兵器が使用されないようにする唯一の方法は全面廃絶」ということが議論の共通の土台となりました。第1回締約国会議で設置された条約を具体化する作業部会の報告を喜びを持って聴き、「米ロ間の核戦争による気候変動で最大50億人が餓死する可能性」という科学諮問グループ報告に対して真剣に耳を傾けました。

大きな論点として深められたのが「核抑止」論への批判です。

地中海の島国マルタ代表は、「核兵器が無差別の大量破壊を行う脅威を与えている時に誰が安心できるだろうか。核抑止は決して安全につながらない」と喝破。オーストリア代表は、「核抑止力論は説得力を持っていない」「核兵器依存の固定観念の転換が緊急に必要だ」とよびかけました。私も国会議員会議で「いざという時には広島・長崎の惨禍もためらわない立場が『核抑止』論だ」と批判しました。

政治宣言は、核兵器が「平和と安全を守るどころか、強制、脅迫、緊張の高まりにつながる政策手段」になっていると痛烈に批判し、会議は「核抑止」論からの脱却を訴える報告書作成も決定。核兵器禁止条約が、核保有国による核使用の手をきつく縛る力を持っていることを実感しました。

約束果たせ

核軍備縮小・撤廃について定めた核不拡散条約(NPT)第6条の義務や核兵器廃絶の「明確な約束」を、どの核保有国も果たしていないと非難し、NPTと補完しあう核兵器禁止条約を生かして、核保有国に迫っていこうという議論が深められ、政治宣言に盛り込まれたことは重要です。

核兵器禁止条約第6条の核被害者支援・環境修復と第7条の国際協力の具体化が活発に議論されたのは今回の会議の大きな特徴です。

日本原水協事務局次長の土田弥生さんが、日本国民は、広島、長崎、ビキニと3度も核被害を経験し「巨大な権力により被害が隠蔽(いんぺい)され被害者は放置された」と告発、「救援と被害の実相解明、人類と核兵器は共存できないことの普及」を呼びかけました。

太平洋の島国キリバスの22歳の青年が被害者支援の「国際信託基金」設立への期待を述べ、次回会議に向けた具体化を決めました。

「ジェンダー平等」のセッションが初めて設けられたのも核兵器禁止条約ならでは。核兵器使用による非人道的な影響が女性や子どもに不釣り合いに深刻に出ていることが議論され、新日本婦人の会の平野恵美子副会長は、「女性たちの行動が『核抑止』論を打ち破る力になっている」と力強く語りました。

(つづく)

【「しんぶん赤旗」2023年12月18日付】

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