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【10.07.29】東大学長と懇談

大学予算1割削減で8学部・科 廃止相当

 
(2010年7月30日「しんぶん赤旗」より)

 日本共産党の小池晃政策委員長、宮本岳志、笠井亮両衆院議員、足立正恒学術・文化委員会責任者は29日、東京大学で濱田純一学長、佐藤愼一、前田正史両副学長と懇談し、深刻な危機にある国立大学の現状と打開の方向について意見交換をしました。

小池氏は共産党が6月3日に発表した大学政策の提案について説明し、「大学の発展を応援する政治」への転換方向を述べました。

 濱田学長は日本共産党の提案について、「どの項目も私たちの現場の感覚をよく受け止めている」と発言。政府が閣議決定した概算予算基準でうち出した1割削減の方針が、大学にも適用されるおそれに言及し、「これまで相当の削減がされて、さらに1割減となると法学部や医学部など8学部・研究科が廃止されることに相当する」と述べ、佐藤副学長は一律削減されれば「(学部の)運営ができない状況になる」と危機感を表明しました。前田副学長も、大学予算削減について「欧米やアジアの国では、戦略的・長期的に増額している。日本だけが削減では中国、韓国に頭脳流出する」と批判しました。

 学生への経済的支援については前田副学長が「お金に苦労している学生がたくさんいる。何とかしてあげたい」と述べたのに対し、宮本氏は「高等教育の無償化が国際的な流れだ。大学も無償化に向かうべきだ」と述べると、濱田学長もその方向を希望しました。

 最後に宮本氏は「大学の現場では悲鳴が上がっている、大学予算の一律削減を皆さんと一緒にはね返していきたい」と決意を述べました。

壊滅的な打撃
 政府が各省庁一律で2010年度比1割削減するという概算要求基準を閣議決定したことに、学長など大学関係者に「高等教育の壊滅的な打撃を与える」と批判の声が広がっています。

 都内12の国立大学でつくる国立大学協会(国大協)東京地区支部は26日に声明を発表。大学運営の基盤的経費となる国立大学運営費交付金や私立大学経常費補助が1割もの規模で削減されれば「国立大学のみならず、日本の大学システム全体が崩壊し、将来的に初等中等教育を含めた教育基盤と科学技術の基盤にも壊滅的な影響を及ぼす」と指摘します。

 こんどの1割削減の対象には、国立大学運営費交付金、私学助成、科学研究費補助金なども含まれています。仮に国立大学運営費交付金に当てはめると削減額は1100億円以上にのぼります。

 各大学では削減の規模を試算(概算要求基準決定前)しています。それによると、「医学部と工学部の機能停止」(群馬大)「17の学部・大学院が消滅」(北海道大)「札幌キャンパスが消滅」(北海道教育大)などのほか、「常勤教員の人件費で全体の17・2%、139人分」(信州大)「看護師人件費134人分。地域の中核病院、特定機能病院としての機能が崩壊」(香川大)「学部学生の授業料の10万円の値上げ」(岩手大)にあたるとしています。

 もともと日本の高等教育への公的支出はOECD(経済協力開発機構)諸国で最下位です。その上に、「大学の構造改革」のもとで国立大学運営費交付金を6年間で830億円削減しました。その額は小規模な国立大学約26校分にあたります。私立大学補助も連続削減されてきました。このため大学はすでに教育・研究のための財政が枯渇し、地方の大学や中小の大学の存立さえ危ぶまれる事態がすすんでいます。一律削減への危機感もこれが背景にあります。

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