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【07.11.19】築地市場移転問題で質問主意書を提出 

卸売市場法や土壌汚染対策法からも国の直接の責任が問われている

豊洲の「移転予定地」
東京都が強引に推し進める東京都中央卸売市場築地市場(中央区)の豊洲地区(江東区)への移転問題は、移転先の東京ガス工場跡地の土壌や地下水の汚染が深刻で、市場関係者や都民の反対運動が大きく広がっています。
 この問題で笠井亮衆院議員は都議団や中央・江東区議団などとも連携して、現地調査や市場関係者との懇談、農水省や環境省からの聴取、集会への参加などを重ねてきました。これらをふまえ19日、福田内閣の対応をただす質問主意書を提出しました。
 質問主意書の概要と全文は次の通りです。(写真は豊洲の「移転予定地」)

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質問主意書の概要
 土壌汚染等が深刻な用地への移転はやめるべきで、関係者・消費者の合意や理解も得られていない。東京都の責任ある対応は当然であるが、卸売市場法や土壌汚染対策法上、国の責任と権限は明確であり、国の直接の責任と対応が問われている。こうした角度から問題をただしています。
 具体的な質問内容は次の通り。

第一項目 福田内閣の基本的な姿勢を問う

第二項目 土壌汚染問題について
国の判断や対応の適否が問われ、判断のおおもとになるのは科学的根拠である。

1、環境省は土壌汚対策法は食品の安全を担保するものでない旨明らかにしているが、土壌汚染等が問題になっている用地への食品関連施設を開設する場合の安全性について、国はどのような研究・検討を行ってきたか、審議会等での議論はどうか、法令や基準、ガイドライン等はあるか。

2、判断の確たる根拠がないなら国として必要な研究・検討に着手すべきで、確実に安全という根拠がないなら、移転は許可すべきでない。
東京都の主張を鵜呑みにするだけなら卸売市場法は形骸化したものとなる。

3、環境や健康について、被害を未然に防止するために予防的な原則・立場で対応することが重要ではないか。

4、大規模な地震の際の液状化、側方流動の危険についてどう認識しているか。

5、この間の経過についても再吟味が必要。「8次整備計画」の策定過程で土壌汚染等や地震について国として主体的な検討がされておらず、移転計画は白紙に戻し再検討すべき。この立場で卸売市場法5条にもとづき東京都と協議せよ。

6、「附則第3条」の見直し要望はきわめて強い。国としてどう考えているか。

7、「クロスチェック」や「追試」などの手法の有効性について国はどう認識しているか。

8、土壌汚染状況調査について第三者機関による調査・チェック等の仕組みを検討すべきではないか。

第3項目 市場関係者、消費者、都民・国民の理解と合意について

1、東京都自身、合意形成の重要性を述べているが、国はどう考えているか。

2、卸売市場法では業務規定の変更には大臣の認可が必要で、「廃止」の場合の認可には「一般消費者及び関係事業者の利益が害されるおそれがないと認められるとき」との要件が定められている。「利益が害されるおそれがない」と真に認められなければ認可の要件を満たさぬと思うがどうか。

第4項目 影響は甚大であり、移転を凍結し、大臣が現地に赴き関係者の意見を直接聞くことや公聴会を開くなどすべきではないか。
以上

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質問主意書の全文

築地市場移転問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。
             平成十九年十一月十九日

               提出者 笠井 亮
                  
衆議院議長 河野洋平殿

築地市場移転問題に関する質問主意書

 東京都中央卸売市場築地市場は一九三五年の開設以来、「都民の台所」として東京都民はもとより、全国の消費者に生鮮食料品を供給する上で大きな役割を果たしてきた。その取扱高は水産物・青果合わせて年間約九十万トン、金額にして約六千億円におよぶ我が国最大の中央卸売市場であり、水産物では世界最大の市場となっている。「築地」の名は海外にも広く知られ、隣接する「場外市場」とともに内外から多くの来訪者が訪れている。
 東京都は現在この築地市場を江東区豊洲に移転する計画をすすめている。しかし移転先の東京ガス工場跡地は、東京ガスの調査によってベンゼン、シアン、ヒ素、水銀、六価クロム、鉛などの有害物質で土壌や地下水が汚染されていることが明らかとなっており、こうした汚染地への市場移転に市場関係者や科学者、都民・国民から大きな批判がわきおこっている。
私は先日、党東京都議会議員団、同中央区議会議員団、同江東区議会議員団、同東京都委員会副委員長・田村智子氏らとともに、豊洲地区を視察し、築地市場関係者とも懇談した。関係者からは改めて移転に反対する強い意見が寄せられた。
東京都がことし四月に設置した「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」が八月に行った豊洲地区の追加的な調査では、東京ガスの調査で濃度が低いとされていた地点や土壌改良を行った地点などからも、環境基準の千倍にあたる高濃度のベンゼン等有害物質が検出されるなどしている。土壌汚染が深刻な用地への卸売市場移転はやめるべきとの都民の声は当然である。
 この問題では東京都が大きな責任を有しており適切な対応をすべきことは言うまでもないが、同時にこの問題では国の直接の責任と対応が問われている。中央卸売市場の整備にあたっては卸売市場法により、農林水産大臣が「卸売市場整備基本方針」を定め(第四条)、これに即して農林水産大臣が「中央卸売市場整備計画」を定めることとなっており(第五条)、個々の中央卸売市場開設にあたっては開設者である地方公共団体が農林水産大臣の認可を受けることが必要である(第八条)。その際、「中央卸売市場整備計画」に適合していることなど認可の基準が定められており(第十条)、地方公共団体の判断だけで中央卸売市場の開設を行うことはできない。築地市場の豊洲移転は二〇〇五年三月三十一日に策定された「第八次中央卸売市場整備計画」によって定められたものである。もし食品の安全や安心、流通などに関して問題が生ずることがあれば、東京都とともに国の直接の責任が問われることとなる。
 また土壌汚染対策法は都道府県知事の責任と権限とともに、環境大臣の責任と権限を定めている。すなわち第二十九条では必要な事項について報告を求め、立入検査を行うことが認められ、第三十一条では関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができ、第三十二条では都道府県知事等に対し、必要な指示をすることができる。環境の保全と人の健康の保持に国は大きな責任を有しており、こうした点からも責任ある対応が求められている。
 築地市場の豊洲移転に関しては、水産仲卸業者でつくる「市場を考える会」がことし四月に行った意向調査では水産仲卸業者の七十三%が移転に反対し、全労連全国一般東京地本東京中央市場労働組合の五月のアンケートでは青果仲卸業者の八十五%が築地での営業を希望している。移転に関して市場関係者の多くが反対しており、消費者、都民の理解もえられているとはおよそ言えないのが現状である。
国はこの間、卸売市場について規制緩和の名のもとに、競りの原則の緩和や、卸売手数料の「弾力化」、買付集荷の「自由化」など一連の措置をすすめてきた。こうした措置は大手量販店等の要請にこたえる一方で、きびしい経営状況にある中小業者の淘汰につながるものとの強い批判が出されている。築地市場の移転計画について東京都は「現市場は、施設構成や場内物流面で、取扱量を高める量販店・外食産業等のニーズに十分対応しきれていない面がある。量販店・外食産業等の求める商品提供機能を低コストで提供できる場内物流体制を構築することが重要な要素である」(「豊洲新市場実施計画のまとめ」二〇〇五年九月)ことを「物流システム構築」の「視点」の第一にあげるなどしており、移転は量販店等の要請にこたえるという問題意識が色濃く反映したものとなっている。
 食品の安全と安心は国民の生命と健康、生活の大前提となる問題であり、有害物質による汚染が明らかになっている用地に中央卸売市場の開設などすべきではない。また、市場関係者の合意や、消費者、都民・国民の理解や同意もきわめて不十分な中で移転を強行すべきではない。
 こうした立場から国会法第七十四条に基づき、以下の通り質問する。

一、 第一に国の基本的な姿勢について聞くが、卸売市場の開設や移転、立地に関しては、何よりも食の安全と安心が第一に考慮されるべき問題である。この間、食品の安全をめぐる事件や問題が相次ぐ中で、消費者・国民の食の安全・安心に対する関心も高く、行政機関に求められる責任も重い。
 築地市場移転に対する基本的な姿勢についてこの間政府は、「これは国民の健康と生命に直結する問題である、そのような認識を重々持って対処していかなければならない、このように思っております。」(二〇〇七年二月十六日衆議院予算委員会での松岡利勝農林水産大臣の答弁)、「豊洲地区で東京都の中央卸売市場を開設をするということは、慎重の上にも慎重な判断をしなければならないというのを基本に考えております。」(同三月二十日参議院環境委員会での若林正俊環境大臣の答弁)などとのべてきた。
首相は先の所信表明演説の中で、「国民の安全・安心を重視する政治への転換」として、「成熟した先進国となったわが国においては、生産第一という思考から、国民の安全・安心が重視されなければならないという時代になったと認識すべきです。政治や行政の在り方のすべてを見直し、国民の皆様が日々、安全で安心して暮らせるよう、真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換し」とのべ、「毎日の食卓の安全・安心は、暮らしの基本です」とのべた。「国民の安全・安心を重視する政治への転換」を言うのなら、築地市場移転問題についてもこの立場をつらぬくべきである。この問題に対し現内閣としてどういう基本的な姿勢でのぞんでいるか。
  
二、 第二に土壌汚染問題について聞くが、先にのべた通り、築地市場移転については開設者である東京都とともに国が直接の責任を有しており、国の判断や対応の適否が問われる問題である。その場合に判断や対応のおおもとになるのは科学的な根拠である。東京都は豊洲移転予定地について盛土など土壌汚染対策法の水準をこえる対策を行う旨主張しているようであるが、土壌汚染対策法を所管する環境省は同法が食品の安全を担保するものでないことを明らかにしており、土壌汚染対策法は卸売市場を移転した際に食品が安全かどうかの判断の十分な根拠にはならない。
1、 有害物質による土壌や地下水の汚染が明らかになっている用地に中央卸売市場など食品関連施設を開設する際の安全性について国は、この間どのような研究や検討を行ってきたか。審議会や検討会等での議論はどのようものがあるか。判断の根拠になる法令や基準、ガイドライン等はあるか。

2、 判断するための確たる科学的根拠を有してないのなら、国として必要な研究・検討を直ちに行うべきではないか。
また、国として確実に安全という根拠・認識がなければ、安全が懸念される用地への移転はすすめるべきではなく、国として移転を認可すべきではないと思うがどうか。
東京都はこの八月に行った追加的な調査の結果をふまえ、さらに詳細な調査を行うとしている。東京都が詳細な調査は行うことは当然であるが、同時に問われるのは国としての科学的な根拠にもとづく主体的な判断・検討である。東京都の主張をそのまま鵜呑みにし追認するだけであれば卸売市場法にもとづく法制度は有効に機能しているとは言えず形骸化したものとなる。人の健康を保護し、生活環境を保全することにはならない。

3、この間、食の安全をめぐって、「ミートホープ」社によるひき肉偽装事件や、「白い恋人」「赤福」の不正など事件が相次いでいる。これらに対する国民の批判はきわめて厳しいものがあり、行政機関に対しても具体的な健康被害が発生してないもとでも被害を未然に防止する立場での厳正で責任ある対応を求めている。
環境の保全や人の健康について、具体的な被害が発生しておらず、発生の仕組みや影響の度合いなどについて科学的に不確実性がある場合にも、とりかえしのつかない被害・影響を未然に防止するために、危険性があるなら予防的に対処することが必要である。これはこの間の公害問題などでの教訓でもある。
土壌汚染対策法は食の安全を担保しているとは言えず、豊洲地区で盛土などの対策が行われたとしても、汚染土壌が存在する限り、汚染土壌の付着、汚染水の吸着など食の安全について危険性が除去されたとは言えない。この問題に対処する上では、健康被害が生ずる恐れがあるものとして予防的な立場・原則に立って対応することが重要と考えるがどうか。

4、移転予定地の豊洲は臨海部の埋立地であり、大規模な地震の際の液状化、側方流動の危険が懸念されている。東京都による八月の追加調査の際には、調査のためのボーリングを行っただけでも液状化が認められることが研究者から指摘されている。同地で液状化などが起これば汚染された土壌の噴出などの危険があることが指摘されている。こうした点についてどう認識しているか。

5、 国としての判断・対応の適否という点では、この間の築地市場移転問題をめぐる経過についても再吟味が必要である。
 農林水産大臣が二〇〇五年に「第八次中央卸売市場整備計画」を策定した当時、すでに豊洲での土壌・地下水汚染が明らかとなっており大きな問題となっていた。こうした中でありながら、同「整備計画」策定の過程において、食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会での審議含め、土壌汚染や食の安心、安全という観点からの国としての主体的な検討がされていなかったことが明らかになっている。また、豊洲移転予定地の首都直下型地震の際の液状化・側方流動と汚染物質の噴出の危険が研究者からも指摘されている。しかし同「整備計画」策定の際にはこうした観点からの国としての主体的な検討がされてなかったことも明らかになっている。
 「第八次中央卸売市場整備計画」の策定過程を経過的にふりかえるなら、土壌等の汚染が問題となっている中で、必要な検討もせぬまま豊洲移転を決めた国の責任は重大である。この際、「第八次中央卸売市場整備計画」での豊洲移転に関する該当箇所は白紙にもどし再検討すべきであると思うがどうか。
 また、卸売市場法では「中央卸売市場整備計画」を策定する際には同法第五条により関係地方公共団体と協議することとなっている。計画を再検討し見直すという立場で東京都と協議すべきと思うがどうか。

6、 土壌汚染対策法は「附則第三条」により、土壌汚染状況調査について「この法律の施行前に使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地については、適用しない」としている。このため豊洲地区の東京ガス工場跡地については土壌汚染対策法が適用されない。しかし、法に基づく汚染調査や指定区域のあまりにも少ない現状をみれば、この適用除外条項が不適当なものとなっていることは明らかである。この「附則第三条」を見直し、施行前に廃止された用地にも適用すべきではないかとの要望が「市場を考える会」などから強く出されている。さる十月三日には同会が主催して集会・行動が行われ私も参加したが、そのあと関係行政機関に対し改めて要望が出されている。この問題について国としてどう考えているか。

7、 科学の世界ではさまざまな事象の調査・解析にあたって、当事者がそれにあたるとともに、結果の科学性をより確かなものとするために、他者が同じ問題について調査・解析を行い、それらを比較・検討する「クロスチェック」や「追試」などの方法が広く用いられており、行政機関などでも取り入れられている。こうした「クロスチェック」や「追試」などの手法の有効性について国はどう認識しているか。

8、土壌汚染対策法は土壌汚染状況調査について、土地の所有者等事業者の責任で実施することとしているが、第三者機関による調査・チェック等の仕組みを検討すべきではないか。

三、第三に市場関係者との合意形成や、消費者・都民の理解に関して聞くが、移転について市場関係者の中に強い反対があることは先に示した意向調査やアンケートの結果でも明らかである。
1、一般に中央卸売市場の円滑で健全な運営と発展にとって、市場関係者、消費者、国民の理解や納得、合意を得ることはきわめて肝要な問題であり、市場の移転という問題についてはなおさらである。市場関係者との合意形成の重要性について東京都自身、「築地市場の移転には、業界団体との合意形成が重要であると認識しております」(二〇〇七年二月二十六日都議会予算特別委員会での比留間英人東京都中央卸売市場長の答弁)としている。市場の移転含め中央卸売市場の運営や発展にとって、市場関係者や消費者、国民の理解や納得、合意を得ることの重要性について国はどう認識しているか。

2、中央卸売市場の業務規程を変更する場合には卸売市場法第十一条で農林水産大臣の認可が必要で、そのための要件も定められている。また廃止する場合は同法第十四条で「開設者は、中央卸売市場を廃止しようとするときは、農林水産大臣の認可を受けなければならない。2 農林水産大臣は、中央卸売市場の廃止によって一般消費者及び関係事業者の利益が害されるおそれがないと認めるときでなければ、前項の許可をしてはならない。」とされている。
市場関係者の移転反対の理由として東京都は「移転反対の内容といたしましては、豊洲新市場予定地には東京ガスが操業していたころの土壌汚染があり、安全性に不安がある、新市場に希望どおり移転できるのか、使用料を初めとして、新市場での経営上の負担がどうなるかなど、事業継続に対する懸念がある、長年にわたる築地市場での商売を通して、築地ブランドを自分たちの手で築き上げてきたことへの愛着があるなどが主なものであると認識をしております。」(二〇〇七年二月二十六日都議会予算特別委員会での比留間英人東京都中央卸売市場長の答弁)とのべている。移転を強行すれば「関係事業者の利益が害されるおそれ」があることは東京都のこの認識によっても明らかである。
築地市場の移転・廃止については「一般消費者及び関係事業者の利益が害されるおそれがない」と真に認められるときでなければ許可の要件を満たさないと思うがどうか。

四、築地市場は我が国最大の中央卸売市場であり、そのあり方は国民・都民の消費生活や、市場関係者や労働者の暮らしと営業、地域経済等に深くかかわり、影響は甚大である。土壌汚染が明らかとなっている豊洲地区への移転については国民の批判・関心も高い。この際、移転計画を凍結し、関係大臣が現地に赴き関係者の意見を直接聞くことや国として公聴会を行うなど国民・都民の意見を広く聞くべきではないか。

右質問する。

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