
■ 人類の未来への「野心的な挑戦」 「科学者は仕事をした。今度は政治家の番だ」といわれる地球温暖化問題。 |
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浅岡美恵(あさおか・みえ NPO法人 気候ネットワーク代表)
抑止に挑戦する欧州と 対極にある日本の姿が
本書は、笠井衆議院議員を団長とする日本共産党地球温暖化欧州調査団のドイツ、英国、EU本部の調査報告書というべきものであるが、笠井議員の次々とわき起こる関心や訪問先での「驚き」を率直で軽快な語り口でつづった旅行記でもあるため、とても読みやすい。少々のことでは驚かないはずの国会議員が我が目、耳を疑うといった訪問先でのやりとりが次々と紹介され、読者が一緒に旅をしているように心をときめかせ、納得し、まちの風景をほうふつとさせる描写を楽しみながら読み進むうちに、野心的な目標を掲げて温暖化の抑止に挑戦する欧州と、その対極にある日本が見えてくるという構図になっている。まさに走りながら深化させているヨーロッパの温暖化政策の「今」を知る必読の書である。
先見性と行動力
今回の調査は今年三月、G8洞爺湖サミットで気候変動問題が最大のテーマに浮上するなか、急きょ、企画された欧州調査だったが、実にいいタイミングだったと思う。誰もが「気候がおかしい」と実感できるほどになってきている。潘基文国連事務総長の「IPCCなど科学者は仕事をした。今後は政治家の番だ。」との問いかけに、日本で「政治は何をすべきか」と自問し、行動したところに、笠井議員の先見性と行動力が窺(うかが)われる。「百分は一見に如(し)かず」である。 日本は先進国のなかで、京都議定書の採択後もCO2の排出を減らせていない国である。他方、英国、ドイツは既に高い中期目標を掲げ、G8サミットで世界の温暖化の取組みをリードし、昨年12月にはインドネシア・バリで、2009年末までに2013年以降についての包括合意を導く行動計画の採択をもたらした。EUも2013年以降の温暖化政策パッケージを1月に発表したところだった。日本と欧州と、どこが違うのか。まさに本書のタイトルが調査に踏み出した動機であり、その回答は日本にとって貴重である。大使館などに足を運んで要請するなど事前の勉強や作業にも驚かされる。充実した成果をもたらしたゆえんであろう。
長期的視点もち
笠井議員は、本書で最後に、日本に欠けているものを三つあげている。一つは気候変動の重大性についての認識や切迫感の乏しさである。科学に対する謙虚さの違いというべきであろうか。二つめに政府の責任ある態度である。業界団体や企業が排出に上限枠を設けるなどの制約に反対をするのはどこでもみられる。だからといって、業界に任せきりにはしない。これは、政府だけでなく政治の責任でもある。三つめに、持続可能な低炭素社会における再生可能エネルギーの位置づけである。このような長期的視点こそ政治の役割である。
本書で繰り返し指摘されているように、危険な温暖化を防止するための「今」の取り組みの重要性を、いかに強調してもし過ぎることはない。洞爺湖サミットが過ぎ、福田首相は政権を投げ出し、日本のメディアから急速に消え去った感のある今こそ、本書が広く読まれることを期待する。
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